その日やむなく人類は その星に不時着した
慄きながら降り立った人々は その光景に目を見開く
その光景は そう 版画の世界だった
地面はダンボール 石はその上に置かれた紙に刷られていた
木々は半紙に刷られ 動物はチリ紙の中で生き生きと動く
それに 見ろ
魚拓が空を飛んでいる
紙の世界で食糧を求めた人類は方々を歩き回るが
さすがに紙は食えません
ヤギすら紙に刷られた世界で
一人の男が狂ってしまった
手に持つジッポで紙々に火を放つ
地面の鎮火は意外と早く終わり
燃えたのは野菜と動物の二枚だった
灰となったそれらを喰らった狂人は
頭がとてもピリッとしました
燃やされて 灰になって 喰われた秋刀魚は
DHCたっぷりだった
同じく喰われた鷹の爪は カプサイシンが豊富だった
食糧事情は改善されて 愛煙家は加速度的に増えてゆく
ほら、隣の家から紙を燃やす音が聞こえてくるでしょう
今日の彼らの夕食は
マツタケ画のバーベキューのようです
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